クノッソス宮殿Palace of Knossos
謎を秘めた巨大迷宮
クレタ島にある紀元前2000年頃に建造された宮殿で、クレタ文明における政治・経済・祭祀の中心として繁栄を極めたが、紀元前1700年頃の大地震により崩壊したため、「ミノス王」が以前にも増して壮麗な大宮殿を再建した。
宮殿の一辺は160mあり、最大の特徴である中庭を囲むように、東側には「王宮」、西側には「神殿」が配置され、部屋の数は1200以上、部分的には4階建ての建物もあり、その複雑な構造と巨大な建造物から「迷宮」と呼ばれた。
城壁はなく、採光用の吹抜けや充実した給排水設備を備え、部屋や回廊には色彩豊かな「壁画」が描かれている。
ミノタウロス伝説Legend of Minotaur
アリアドネの糸
クレタ文明の全盛期に存在した「ミノス王」は、天空神「ゼウス」と人間であるフェニキアの姫「エウロペ」の間に生まれ、クレタ島の前王アステリオスに育てられ、前王アステリオスが亡くなった後、クレタの王位を継承した。
ミノス王はこの王位継承の証として、海神「ポセイドン」に牡牛を送ってくれるように祈り、その牡牛を生贄として捧げることを誓っていたが、ポセイドンがこれに応えて牡牛を送るも、ミノス王はその牡牛のあまりの美しさから、約束を守らず代償を払わなかったため、怒ったポセイドンはミノス王の妻「パジパエ」とこの牡牛を交わらせた。
やがてパジパエは牛頭人身の怪物「ミノタウロス」を生み、ミノス王は名工「ダイダロス」に命じて、「迷宮(ラビュリントス)」を造らせ、そこにミノタウロスを閉じ込めると、この頃、支配下におさめたアテネに対して、その賠償として、9年ごとに7人の若者と7人の乙女を、ミノタウロスの生贄として献上するように命じた。
3回目の献上の時、アテネの英雄「テセウス」が自ら名乗り出て生贄となり、生贄一行とクノッソスに到着した。
その際、テセウスを見て一目惚れしたミノス王の娘「アリアドネ」は、自分と結婚してくれることを条件に、一度入ったら二度と出られないといわれていた、この迷宮(ラビュリントス)から脱出するための助言を約束した。
この条件を了承したテセウスは、迷宮に入るとアリアドネの助言通りに糸玉の糸を垂らしながら持ち歩き、ミノタウロスを見事に退治した後、帰りはその糸を辿ってアリアドネが待つ迷宮の入口まで辿りつき、無事に脱出した。
神と人間の間に生まれ、強権を誇ったミノス王にとって、神と人間の二重の権力の象徴は「両刃の斧(ラブリス)」で、その聖域である王宮は「両刃の斧の家(ラビュリントス)」であり、「迷宮(ラビュリントス)」であった。