目次
イスラエルの太祖 |
モーセの誕生 |
出エジプト |
モーセの最後 |
ファラオは誰か? |
イスラエルの民の太祖アブラハムは、メソポタミアの都市国家ウルに住む遊牧民のテラの子供として生まれ、ある時、テラは彼の家族とともにユーフラテス川上流のハランの地に旅立ち、そこに住み着いた。
父テラの死後、アブラハムは神「ヤハウェ」から啓示を受け、彼の家族を連れてハランから南にある、約束の地「カナン」へと移り住み、その後、彼の妻サラとの間に念願の子供であるイサクが生まれた。
アブラハムは息子を土着のカナン人と結婚させないことを誓い、イサクはハランの娘リベカと結婚し、双子のエサウとヤコブが生まれた。
イサクはヤコブが異教徒のカナン人と結婚しないようハランに向かわせ、ヤコブはハランに向かう途中のある夜に、夢の中で天国に上る階段が現れ、その上に立つ神ヤハウェから「イサクの次男で、アブラハムの孫ヤコブを守る」との啓示を受け、神ヤハウェは彼の一族を祝福し、約束していた土地を永遠に彼とその子孫に与えることを約束した。
また、ヤコブはヤボク川の渡しで天使と格闘したことから、神の勝者を意味する「イスラエル」の名を与えられた。
ヤコブはハランの娘レアとラケル、そして彼女達に与えられた女奴隷の計4人の妻との間に12人の息子を授かった。
この12人は「イスラエル十二部族の始祖」といわれ、中でもヤコブが寵愛したヨセフは、異母兄達の嫉妬でエジプトに売り飛ばされたが、後にファラオに認められてエジプトの宰相の位に就き、大飢饉を救う国政を執り行った。
やがてエジプトに穀物を買いに行った異母兄達はヨセフと再会した後に和解し、ヤコブ一族はエジプトに移住した。
アブラハムの孫ヤコブ一族がエジプトに移住して以来、イスラエルの民はエジプトで暮らしていたが、モーセが生まれる頃には人数が増加し、脅威に感じたファラオは、イスラエルの民を奴隷として酷使し、これ以上増えないように、生まれた男児を皆殺しにするよう命じた。
そんな時代背景の中で生まれたモーセの母はその命に従わず、出生後の3ヶ月間は隠して育てていたが、いよいよ隠しきれなくなったため、パピルスのかごにモーセを入れ、ナイル河畔の葦の茂みに置いた。
それをたまたま通りかかったファラオの王女が拾ったため、モーセはファラオの王宮で育てられ、王女はモーセの実母を乳母として雇ったので、結局、モーセは実母に育てられた。
成長したモーセは、ある時イスラエルの民を酷使するエジプト人を見かねて殺害してしまい、ファラオに命を狙われたモーセはエジプトを離れてミディアンの地に逃げ、羊飼いの女性ツィポラと結婚し、羊飼いとして暮らしていた。
ある日、モーセは燃える柴の中に現れた神ヤハウェから「エジプトに戻りイスラエルの民を救い出し、神が用意した約束の地カナンに導く」使命を受け、エジプトでイスラエルの民の解放交渉をするも、ファラオは頑なに拒絶した。
そこで神ヤハウェは、ファラオに心変わりさせるために、エジプトに「十の災い」を順にもたらし、ファラオは九つの目の災いまでは心変わりしなかったが、最後の究極の災い「ファラオの息子を含め全てのエジプトの長子を無差別に死に至らしめる」により、ファラオはついに音を上げ、イスラエルの民がエジプトを出て行くことを認めた。
ファラオはイスラエルの民がエジプトを出て行くことを認めたが、大量の奴隷を手放すのが惜しくなり、彼らに向けて軍隊を差し向けた。
モーセ率いるイスラエルの民は葦の海の岸辺でエジプト軍に追い付かれたが、モーセが手を挙げると海の水が割れ、渡ることができた。
イスラエルの民が渡りきったところでモーセが再び手を挙げると海が元に戻り、後を追ってきたエジプト軍は海に飲み込まれてしまった。
彼らは海を渡った後も荒野の旅を続け、やがてシナイ山に辿り着き、モーセは山の頂きに降臨した神ヤハウェから、「イスラエルの民の信仰の基本」「社会正義と人間道徳の指針」「人と神の間の契約」に関する戒律を刻んだ石板「十戒」を授かった。
「十戒」とそれを収める「契約の櫃」などに関する啓示を受け下山したモーセは、彼の長い不在で死亡したと思ったイスラエルの民が「金の仔牛」の彫刻を建造し祈りを捧げているのを見て激怒し、十戒と金の仔牛を粉々に砕いた。
モーセは落胆し絶望して、人々から離れた幕屋で過ごし、大切な使命を果たすのに失敗したとの想いが、彼と全ての民の心を包んでいたが、やがて奇跡が起こり、神ヤハウェの思いやりが示され、モーセは再び山の頂きで「十戒」を授かり、新しい聖版を手に下山した際、彼の顔は光を放っており、イスラエルの民は恐れて近づかなかった。
十戒を神の啓示通り作成した契約の櫃に収め、モーセ率いるイスラエルの民はシナイ山から約束の地カナンに向けて、荒野を歩み始めた。
神ヤハウェの言葉を伝えるモーセを信じない人々の反逆や不平不満を言う人々など、途中度重なる苦難の道を乗り越えながら進んでいた。
ある時、モーセは「メリバの泉」で、不平不満を言う人々を抑えるため神ヤハウェに尋ねたところ、「杖を取り、人々を集め、彼らの目の前で岩に向かって、水を出せと命じなさい。岩から彼らのために水を出し、彼らに水を飲ませるがよい」と啓示を受け、モーセは命じられた通り、人々を岩の前に集めて、岩に向かい命じて水を出す際、「反逆する者らよ、聞け。この岩からあなたたちのために水を出さねばならないのか。」と言い、そして「杖で、岩を二度打つ」行為をし、人々の不平不満に負けて、モーセ自身が感情的になってしまい、言ってはいけない言葉を吐き、命じられたことと別な行為をしてしまった。
モーセのこの言葉と行為は、神ヤハウェの御心「イスラエルの民が心頑なで神の御心に従わずとも、彼らを見捨てることなく顧み、慈しみと憐れみを持ってどこまでも彼らを愛し通すこと」に背くもので、彼は約束の地カナンに足を踏み入れることは許されず、ヨルダン川東岸にあるネボ山から西岸にあるカナンの地を眺め、その生涯を終えた。
彼の死後、後継者ヨシュアがイスラエルの民を率いて約束の地カナンに辿り着いた時、出エジプトから40年経過しており、神ヤハウェやモーセを信じず不平不満を言う人々に神は怒り、試練のため荒野を彷徨わせたといわれている。
出エジプトの物語で、モーセの時代のファラオとは誰のことなのか?
「出エジプト記」の出来事が発生した時代は明確にはなっておらず、紀元前15世紀とする「早期説」と、紀元前13世紀とする「後期説」の2つの時代が想定されており、その中でも複数の候補が存在している。
以下は諸説の根拠から推定・類推したもので、確実ではありません。
いつか歴史的事実が明らかになる日が来れば良いなと思います。
【早期説①】出エジプトの推定時期:紀元前1450年頃
「列王記」のエルサレム神殿(ソロモン神殿)の建設が出エジプトの480年後に始まったという記述を根拠とする説
【早期説②】出エジプトの推定時期:紀元前1420年頃
ヨシュアがカナンを征服しようとした際に、エジプトの支配化にあったカナンがエジプト宛てに助けを求めて書いたとされる「アマルナ文書」と紀元前1400年以前頃に陥落したとされる「エリコ遺跡の発掘調査」を根拠とする説
【後期説①】出エジプトの推定時期:紀元前1240年頃(紀元前1279年頃~紀元前1212年頃の間)
「出エジプト記」のラムセスを建設したという記述が、ラムセス二世の王都「ペル・ラムセス」のことで、イスラエルの民が住んでいたゴシェンの地と距離的にも近い(早期説のテーベでは距離がかなり遠い)ことを根拠とする説
【後期説②】出エジプトの推定時期:紀元前1202年頃
早期説①と基本的に根拠は同じで、出エジプト時のファラオの治世が異なる説
【出エジプト記】
1-8:「ヨセフのことを知らない新しい王がエジプトの上に立った。」
1-9:「見よ、イスラエルの子らの民は我々より数が多くて強大だ。」
1-10:「さあ、あの者たちを抜かりなく扱って、彼らが殖えないようにしよう。戦争でも起きた場合、
彼らはきっと我々を憎む者たちに加わって我々と戦い、この国から出て行ってしまうだろう。」
1-11:「それで彼らは、この人々に重荷を負わせて圧迫するため、その上に強制労働の長たちを立てた。
彼らはファラオのために、貯蔵所となる都市、すなわちピトムとラムセスを建てていった。」
1-22:「(ヘブライ人で)生まれて来る男の子はみなナイル川に投げ込み、女の子はすべて生かしておくのだ。」
2-11:「モーセは次第にたくましくなって、自分の兄弟たちの負っている重荷を見ようとそのもとに出て行った。
そして彼は、自分の兄弟の中のあるヘブライ人に一人のエジプト人が殴りかかっているのを見た。」
2-12:「彼は辺りを見回し、そこに誰もいないのを見てから、そのエジプト人を打ち倒し、砂の中に隠した。」
2-23:「こうして多くの日が経つうちにエジプトの王はついに死んだ。
しかしイスラエルの子らはその奴隷状態のゆえになおも嘆息し、苦情の叫びを上げ続けた」
3-10:「それで今、さあ、わたしはあなたをファラオのもとに遣わそう。
あなたは、わたしの民であるイスラエルの子らをエジプトから導き出すのである。」
ファラオ | 早期説① | 早期説② | 後期説① | 後期説② |
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モーセを拾ったファラオの王女 | ハトシェプスト | ハトシェプスト | - | - |
モーセ(0歳)が誕生時 | トトメス1世 | トトメス1世 | ホルエムヘブ | セティ1世 |
モーセ(40歳)がエジプト人を殺害時 | トトメス2世 | トトメス3世 | セティ1世 | ラムセス2世 |
モーセ(80歳)が出エジプト時 | トトメス3世 | アメンホテプ2世 | ラムセス2世 | メルエンプタハ |